介護の制度

延命措置の同意書の書き方|本人の意思は必ず書面で残す

「リビングウィル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 実はこれ、人生の最後に深く関わってくる言葉なんです。

guri
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「尊厳死」もよく聞きますね

最近は人生の最期を自分らしく「自分の意志」で決めたいと考える人が多くなってきました。親の看取りを考えたとき、きちんと確認しておきたいことの一つではないでしょうか。

ここでは 最期の迎え方に深く関係する延命措置、 意思表示や同意書の書き方をご紹介します。

延命措置とリビングウィル

「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビングウイル(LW)です。 引用;日本尊厳死協会より

リビングウィルをわかりやすく言うと、「機械によって生かされている状態になるのなら、延命を望まない」になるでしょうか。

現在の日本の医療現場では「長く生きること=正解」なので、危の命機にある状態なら医学の力で生きる方向で処置がなされます。

呼吸が出来なかければ人工呼吸器、食べ物が食べれなければ胃ろうをつけて、機械による生命維持が始まります。

でもそれは、本当に本人が望んでいることでしょうか?

本当は「治る見込みがないのなら命の終わりを自然に任せたい」「無駄な痛みに苦しみたくない」と思っているとしたら…。

延命装置は本人の意志と反対になってしまいます。

延命措置の具体例

生命維持に対する措置とは、

  • 人工呼吸器装着
  • 中心静脈管や胃管などを通した人工栄養補給
  • 水分補給
  • 腎臓透析
  • 化学療法
  • 抗生物質投与
  • 輸血

などを指します。 いずれも生命を維持するための装置なので、機械をつけなければいずれ死に至ります。

延命措置と終末期医療

2018年3月、厚生労働省は『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』を公表しました。

『終末期の医療やケアは、患者本人による意思決定を尊重して進めることが重要』を原則として、手続きや決めるべき内容が示されています。

大体は臨死段階や終末期には意思を伝えられないので、患者が自己決定できる段階で「本人・医療チーム・代理決定する人(家族など)」の3者が話し合いを持って共通の認識を持つことが大事です。

そして本人の意思を誰もが公平に理解できる状態にするためには、血縁者のみの密室内で書かれた文章よりは、できる限り第三者が介入した文書を作成したほうがいい場合もあります。

延命措置同意書の作り方

それでは延命措置の同意書の作成方法を、具体的に3通りご紹介します。

1.公証役場で「尊厳死宣言公正証書」を作る

「尊厳死宣言公正証書」とは、延命措置を差し控え中止する等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にするものです。

公正証書は、法律の専門家である公証人が法律に従って作成する公文書ですので、個人が作成した私文書に比べて裁判その他の面で高い証明力があり、個人作成にはない大きな効力をもっています。

方法

公証役場に出向き、作成者の依頼に基づいて公証人が証書として作成します。

尊厳死宣言公正証書 (例)

本公証人は、尊厳死宣言者〇〇〇〇の嘱託により、平成〇〇年〇 〇月〇〇日、その陳述内容が嘱託人の真意であることを確認の上、 宣言に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。
第1条 私〇〇〇〇は、私が将来病気に罹り、それが不治であり、 かつ、死期が迫っている場合に備えて、私の家族及び私の医療に 携わっている方々に以下の要望を宣言します。 1 私の疾病が現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫って いると担当医を含む2名以上の医師により診断された場合には、 死期を延ばすためだけの延命措置は一切行わないでください。 2 しかし、私の苦痛を和らげる処置は最大限実施してください。 そのために、麻薬などの副作用により死亡時期が早まったとして も構いません。

第2条 この証書の作成に当たっては、あらかじめ私の家族である 次の者の了解を得ております。 妻 〇〇〇〇 昭和 年 月 日生 長男 〇〇〇〇 平成 年 月 日生 長女 〇〇〇〇 平成 年 月 日生 私に前条記載の症状が発生したときは、医師も家族も私の意思に従 い、私が人間としての尊厳を保った安らかな死を迎えることができ るようご配慮ください。

第3条 私のこの宣言による要望を忠実に果たして下さる方々に深 く感謝申し上げます。そして、その方々が私の要望に従ってされ た行為の一切の責任は、私自身にあります。警察、検察の関係者 におかれましては、私の家族や医師が私の意思に沿った行動を執 ったことにより、これらの方々に対する犯罪捜査や訴追の対象と することのないよう特にお願いします。

第4条 この宣言は、私の精神が健全な状態にあるときにしたもの であります。したがって、私の精神が健全な状態にあるときに私 自身が撤回しない限り、その効力を持続するものであることを明 らかにしておきます。

以上

金額

基本手数料と正本代を合わせて、大体12,000円程度が一般的です。

2.日本尊厳死協会に加入する

日本尊厳死協会に加入するという方法もあります。
こちらは満15歳以上で意思表明能力のある方なら、誰でも会員になることができます。
正会員の年会費は2,000円、終身会員は一括70,000円です。

メリット

日本尊厳死協会発行の会員証とリビング・ウイルの原本証明付コピーが送付されます。これを医療機関や医師に提示すると、意思が受け入れられやすくなります。

また会報や会員専用サイトなどで、リビングウィルに理解ある協力医師名を知ることが出来ます。

デメリット

リビングウィルに加入したからといって、100%患者の願う医療方針になるわけではありません。

ただ会員証を提示することによって、患者本人の意思は格段に伝わりやすくなります。 また協会に加入し最初は延命を拒否していても、死に直面して本人の考え方が変わることもあります。

デメリットが一切ないと言い切れるものではありませんが、いざという時に家族にとって迷いなく決定できる手段となりえるのは間違いないはずです。

3.本人の自筆で同意書を作成する

延命措置の拒否について法律的な決まりがあるわけではないので、本人自筆の同意書でも本来は十分な文書です。

日々を過ごすうちにやはり先進医療による治療を受けたいと思うかもしれません。変更も簡単なのが自筆文書の良いところです。

リビングウィルのHPには「私の希望表明書」という具体的な文書が載っていますので、是非参考にご覧になることをおすすめします。

作成日時と自筆のサインに印鑑をお忘れなく。また立会人がいれば署名してもらうのもよいですね。

途中で延命措置の中止はできる?

終末期医療の場合、延命措置は一度始めたら途中で辞めるのは難いのが実情です。

というのも装置を外してしまうと死に至ることがわかっているので、装置をはずす行為は犯罪に問われかねません。

だから延命治療の中止は出来ないという考えが現実なのです。 ですから、主治医に対してあらかじめ「延命器具は使わないでください」と「不開始」を告げておくか、延命措置につながる可能性のある医療行為について本人や医師、家族と十分に話し合っておく必要があります。

「どう死ぬか」は「どう生きるか」

実際は文書作成はおろか、話題に出すことさえ難しい「延命措置」の問題。 特に老いた両親には死を願うようで、切り出すことが心苦しいです。

だからこそ元気なうちに、一日でも若いうちに話し合っておきたいですね。 切り出し方として一番いいのは、「私の場合はこう考えている」と複数人で話す方法です。

親しい間柄で死生観について話す空気を作りながら、文書にしていけるといいですね。

「どう死ぬか」は「どう生きるか」と同じこと。

一日二日で答えが出る問題ではないと思いますので、まずは心に一石を投じることが最初のステップになるのではないでしょうか。

加入するしないは別として、「日本尊厳死協会」のパンフレットは考えのヒントが散りばめられていますので、親と一読の価値が大アリです。

guri
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まずは会話を始めることが大事ですね